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南北統一と世界平和への道
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第三章 文鮮明師の北朝鮮訪問に関するマスコミ報道


世界日報(1991年12月1日付)
 感慨深く四十一年ぶり故郷へ ― 文鮮明師、北朝鮮入り ―
    崩れる「体制」に救いの手 ― 真の「南北統一」へ道 ―


 世界基督教統一神霊協会(統一教会)創始者、文鮮明師は三十日、中国側が用意した北京空港の貴賓室で中国側の北朝鮮担当者や朴普煕・韓国世界日報社社長、神山威・日本統一教会会長、木下歡昭・日本世界日報社副社長兼編集局長、米国ワシントン・タイムズ社幹部らとにこやかに歓談し、北朝鮮首脳らとの交流を深めてくるとの考えを示した。文師夫人の韓鶴子女史は、文師とともに約四十年ぶりに「里帰り」することができるだけに、緊張の中にも喜びの笑顔を見せていた。

 この日の朝、平壌から特別機で文師に北朝鮮への招請状を持参してきた北朝鮮の朴鐘根氏は、極めておだやか、丁重に文師に招請状を差し出した。報道陣のフラッシュを浴びながら丁重に招請状を受け取った文師は、四十一年ぶりに故郷の地を踏もうとする感慨をかみしめるかのようだった。

 韓国には、韓国動乱(朝鮮戦争一九五〇〜五三年)の時、北から避難してきた人々が、その後孫も含めて約一千万人いる。いわゆる「失郷民」と呼ばれており、北の故郷を思う気持ちは今でも依然として強いものがある。彼らこそが心から南北の統一を願っている勢力といってよい。

 文師は今回の北朝鮮訪問で、統一につながる経済協力以上に、北朝鮮の宗教・思想・教育問題の解決を最重要視している。なぜなら精神的、倫理的価値観の確立なくして、真の南北統一の解決はなく、北朝鮮の希望もあり得ないことを、文師は主張しているからだ。

 今までに韓国から現代グループの鄭周永名誉会長などが北朝鮮を訪問したことがあるが、その目的は経済的利益を最優先させていた。今回の文師の訪朝は、この点に関して今までの韓国財界人と全く異なっている。

 世界的な反共指導者として共産国家から常にマークされてきた統一教会の教主が、実は崩壊する共産主義にとっての救い主になる――という劇的な逆転の第一歩が、今日すでに始まったといえよう。



世界日報(1991年12月7日付)
 文鮮明師、金日成主席と会談
   離散家族再会で合意  ―主席、米大統領への仲介依頼―


 北朝鮮訪問中の世界基督教統一神霊協会(統一教会)創始者の文鮮明師(世界平和連合総裁)は六日午前、北朝鮮の咸鏡南道、興南市近くのマジョン主席公館で金日成主席と単独会談した。同師に同行して北朝鮮を訪問していた黄Y周氏(在米韓国人・現北京居住)が同日夕、朝鮮民航特別機で当地に戻って伝えたもの。両者はこの会談で、(1)離散家族、特に高齢者からの面会を来年から実施する (2)北朝鮮は、これまで主張してきた内容が受け入れられれば「核査察」を受け入れる (3)海外在住の韓国・朝鮮人に対して北朝鮮への経済建設、投資を呼びかける――などで合意した。この後行われた文師・金主席の昼食会で、金主席は文師に対し、ブッシュ米大統領との会談の仲介を依頼するとともに、米国側の正式な招待があれば訪米する意思を表明した。

 文師と金主席との単独会談は同主席公館で六日午前十時三十分から午後一時まで行われた。この中で双方は、韓国動乱(朝鮮戦争、一九五〇〜五三年)によって生じた南北の離散家族の面会について、高齢者からの面会を来年から実施することで完全に合意。面会の実施については、南北双方で場所等、細部にわたり「合意されれば、来年早々から実施されるということを意味したものだ」と黄氏は語った。

 続いて北朝鮮の核問題が話し合われ、金主席は北朝鮮には核兵器はなく、また核兵器を造る意思もないと強調し、核の平和的利用を行うとしたうえで、北朝鮮がこれまで主張してきた内容が受け入れられれば「核査察」を受け入れる、と明言した。

 また、海外在住の韓国・朝鮮人を動員し、北朝鮮の経済建設を支援するための合弁事業、投資が行われるようにすることで、文師と金主席は意見の一致をみた。

 今回の訪問では文師側は金剛山観光特区開発を提案、北朝鮮側は豆満江経済開発、元山貿易港開発などへの協力を要請している。さらに黄氏によれば、金主席は「南北首脳会談に応じる用意がある」として、「(盧泰愚韓国大統領と)会って、統一方式を討議、協議しよう」と、南北首脳会談実施を呼びかけた。

 単独会談後行われた昼食会で、金主席は文師に対し、同師がブッシュ米大統領との親密な関係である点を指摘したうえで、米国に金主席の招待を仲介してくれるよう依頼した。金主席は「(米国から)招待されれば行く」と、訪米する意思のあることを明らかにした。

 文師は今回、訪問中、万寿台国会議事堂で神主義、頭翼思想、真の愛について演説するなど、南北両国民の宗教、思想、教育面での協力にも力点を置いており、金主席との会談でも、同内容が話し合われたもようだ。

 なお、黄氏は同日夕、特別機で再び平壌に戻った。文師一行は七日午後四時到着の特別機で北京に戻る予定。

 文師は夫人の韓鶴子女史、韓国「世界日報」の朴普煕社長夫妻ら一行八人とともに十一月三十日、平壌入りし、北朝鮮滞在中に金日成主席をはじめとして、朝鮮海外同胞援護委員会の尹基福委員長(祖国平和統一委員会副委員長)、文師の招請人である金達玄副首相兼対外経済委員会委員長ら政府高官と宗教・思想・教育問題および金剛山観光特区開発などを含む経済協力問題を話し合った。

 このほか、五日には、世界平和連合総裁名で文師は尹委員長との間で、(1)近い数年内に朝鮮統一を実現すべき (2)核エネルギーは平和的目的にのみ利用する――など十項目にわたる共同声明を出した。

 また、同師の肉親と四十数年ぶりに対面したほか、生まれ故郷である平安北道定州を訪問、金剛山の視察を行うなど一九五〇年十二月に北朝鮮を出て以来、四十一年ぶりに故国での日々を過ごした。



 世界日報・社説(1991年12月2日付)
 統一へ文師訪朝の歴史的意義



 歴史は時折意外な展開を示す。世界基督教統一神霊協会(統一教会)創始者、文鮮明師夫妻一行の北朝鮮入りのニュースがまさにそれである。

 これまで宗教を真っ向から否定しソ連・東欧の共産主義崩壊後の世界で最も硬直し、閉鎖的な共産国家だった北朝鮮が、勝共運動を推進してきた世界的な指導者、文師を自国に迎え入れたのである。まさに驚くべきことである。厳しい凍土に自由の割れ目が生じたのであろうか。

 文師の北朝鮮訪問が韓民族の悲願である韓半島の平和的統一に寄与し、閉ざされていた北の人々の解放と幸福に役立つことを心から念願する。


 共産国の救済も図る勝共運動

 それにしても文師はなぜ北朝鮮を訪問したのだろうか。文師は韓半島を世界の全方位的混乱と矛盾を象徴する地域とみなしている。すなわち、イデオロギー面では共産主義と民主主義の対立、哲学では唯物論と唯心論の対立を含めた東西世界の矛盾が韓半島での南北の対立に具現されている。

 また、経済的には世界の「富める北」と「貧しい南」の世界の矛盾という南北の格差を象徴している。韓国は富める北の世界を代表し、一方北朝鮮はソ連からも援助を断たれ、経済的に困窮を極めている開発途上国を代表している。

 このため文師は、韓半島は現代世界の矛盾が集中している地域とみなしており、韓半島の平和的統一達成は政治イデオロギー並びに現代哲学の対立と矛盾の解決に役立ち、さらに南北経済の平準化のモデルとなり、ひいては二十一世紀を前に人類の課題の根本的解決につながるとみなしている。

 ところで文師の勝共運動の最大の特色はいわゆる反共運動と違って、破綻した共産主義者や共産主義国の救済を図ることをも目的としている。すなわち共産主義者に対しては、まず唯物弁証法を含めた共産主義思想の間違いを勝共理論によって理路整然と伝えるとともに、悔い改めた共産主義者や破綻した共産主義者の更生と経済再建を支援することを目指している。ソ連に対する姿勢がまさにそうであった。

 一九八五年八月、ジュネーブで開かれた世界平和教授アカデミー世界大会で文師は、集まった世界のソ連問題専門家たちに対してソ連共産主義崩壊を予言するとともに、共産主義崩壊後のソ連をどのように助けるかを会議のテーマとすることを要請した。ゴルバチョフ大統領が就任したばかりの時であった。

 昨年四月、モスクワで開催された世界言論人会議で、文師はゴルバチョフ大統領と会談し、共産主義崩壊後のソ連の再建に宗教を通じた精神復興の大切さを訴えた。また文師は会議でのメッセージの中で、ヨーロッパ大陸の心臓部を占め、西は西ヨーロッパ諸国と、東はアジア諸国と国境を接するソ連の重要性を指摘し、「ソ連が変われば世界が変わる」とソ連の再建支援を全世界に訴えた。

 文師の北朝鮮訪問は、世界の矛盾が集中した象徴的地域である韓半島の問題を解決するため北朝鮮に自ら乗り込み、南北の平和的統一達成によって民族の悲劇を解決するとともに東西南北、全方位的な現代社会の対立と矛盾解決をその象徴の地で行おうとする意図から出たものと解される。


 金主席との単独会談焦点に

 一方、北朝鮮が文師を受け入れたのは、冷戦構造の崩壊、世界的な民主化の潮流の中で、これ以上孤立化することは政治的にも経済的にも不可能と考えたためではないだろうか。それにしても、主体思想に基づく独自の共産主義体制を固守し、唯物論の立場から宗教を否定してきた北朝鮮が文師を受け入れたのは驚くべき変化と言わざるを得ない。

 文師の北朝鮮入りは、北朝鮮の金達玄副首相兼対外経済委員長が「統一教会の教主」として招待したもので、招待実現まで秘密裏の接触が文師側と北朝鮮側との間で続けられてきた。四月に文師の提唱で行っている「世界平和のためのサミット協議会」で作った「韓半島平和統一国際委員会」委員長のロドリゲ・カラソ・オディオ・コスタリカ元大統領が北朝鮮を訪問、その際、北朝鮮側は文師と接触したいと要望したことが契機である。

 文師の訪朝は一九五〇年十二月に北朝鮮を出てから実に四十一年ぶり。平壌に到着した文師は姉妹などの六人の肉親と感激の対面を行ったという。喜ばしいニュースである。文師の北朝鮮訪問のハイライトは北朝鮮政府首脳との会談である。文師は出発に先だって北京国際空港で「私は今回の訪問が祖国統一を早める旅行になることを望む」と語り、「金日成主席と単独会談することになろう」と語っている。世界はかたずをのんで同会談を見守ることになろう。

 文師と金日成主席との歴史的会見が実現し、アジアに残った冷戦構造の残滓解消と韓半島の平和的統一が大きく前進することを望んでやまない。



世界日報(1991年12月7日付)
 南北平和統一の扉開いた文師


 十一月三十日から北朝鮮・平壌入りしていた世界基督教統一神霊協会(統一教会)創始者、文鮮明師は六日、金日成主席と会談した。世界的宗教指導者であり、保守勢力のリーダーである文師が、頑迷な社会主義(主体思想)を守る国家のリーダー、金主席と会談したのであるから、われわれはこの両者の会談は画期的な出来事であると考える。


 勝共運動から交流のパイプ

 これまで、韓半島の統一のために、韓国政府はさまざまな努力をしてきた。また北朝鮮の統一への方法手段については異論もあろうが、統一そのものを目指してきたことは事実である。韓半島の統一は韓民族の悲願である。これを抜きにして今回の文師の訪朝と金日成主席との会談の意義は理解できない。

 会談の内容は、五日に文鮮明師と尹基福・朝鮮海外同胞援護委員会委員長(祖国平和統一委員会副委員長)との共同声明をベースに、(1)数年内に韓半島を統一すべきである(2)来年中に南北の離散家族のため双方が合意する場所に面会所と書簡交換所を設置(3)少年少女の芸術団の相互派遣(4)核エネルギーは平和目的のみに使用(5)米国の招待があれば金主席は訪米の用意がある――などといった点について話し合われた。

 ここでわれわれは文師の訪朝と金日成主席との会談について、具体的に評価してみよう。まず考えられることは、これまで政府間で南北統一について接触が重ねられてきたが、南北統一についてのパイプが民間レベルでできたことを意味するのである。そして、南北統一は夢ではなく、現実のものとしてとらえることのできる射程に入ったということだ。 

 分断された国家がいがみ合う二国が関係を改善していこうとすれば、政府間レベルとともに民間レベルでの交流を積み重ねることが、相互の不信感を払しょくしていく地道な手段であることは間違いない。かつてわが国でも中国との交流は「ピンポン」から始まった。少年少女の芸術団の相互訪問が実現し、離散家族が対面すれば、互いの実情を理解し合い、統一への国民交流を促進することができるのではないか。

 ここで、注意を喚起しておかなければならないことがある。文師は昨年四月、モスクワで「世界言論人会議」「世界平和のための頂上会議」を主催し、その間ゴルバチョフ大統領と会談した。その時は、同大統領は、すでにペレストロイカ(再編)、グラスノスチ(公開)などの政策を掲げて実行していた。同大統領のこうした政策を文師は支持する一方で、ソ連に宗教の必要性を説き、青少年の教育の大切さを訴えた。これにソ連側がこたえて、今日ソ連の学生多数が米国で、文師の思想を勉強していると聞く。

 文師訪ソの前後、ベルリンの壁は崩壊し、東欧はまたたくまに民主化していき、ソ連自体が共産主義を放棄するに至った。文師の訪ソは名実ともに目に見える形となって現れ、世界平和に向けて大きく前進していったのである。

 しかし、今回の訪朝は、北朝鮮が開放に向かうことを先取りしたようなもので、いわば「約束手形」を切ったようなものだ。先の文師訪ソと今回の訪朝は状況が違うといっていい。変化はこれから起こるのである。今後の北朝鮮の姿勢の変化に注目したい。

 文師は宗教指導者であるとともに、共産主義の克服を訴え、世界的な運動を展開してきた勝共運動の指導者でもある。その人を北朝鮮が受け入れるということは、すでに同国内部で何らかの変化が起きてきたことを意味するものだろう。

 「北」には「北」の狙いがあるはずだ。冷戦構造が崩壊した後、世界的に民主化の潮流が定着している中で、これ以上孤立化を深めることは得策でないとの判断があり、文師を招待することにより、西側、特に米国とのパイプをつくりたいと考えているのではないか。


 民族自決という問題として

 ここで注目したいことは、南北統一が現実性を一歩強めたものとなった今、その南北統一は民族の自決だということである。その意味では、日本が単独で北朝鮮との間で国交正常化を進めることは意味をなさなくなる。むしろ、韓国と北朝鮮との間の統一への枠組みを越えるのではなく、背後にあってわが国の役割に徹するべきである。したがって日朝国交回復は時期尚早であると言えよう。

 文師が世界的に展開する統一運動は、崩壊した共産主義国を救済し、そのうえ共産主義を己の生きる糧としてきた共産主義者の魂の救済をも目指している。そして、現在家庭の崩壊、個人主義の行き過ぎによるエゴイズムの蔓延の危機にある米国はじめ資本主義陣営にも、文師の運動の輪が広がっている。文師は民主主義は崩壊の岐路に立っていると予言すらしている。このような世界的視野に立つ文師のビジョンと運動に今後とも注目したい。


世界日報(1991年12月14日付)
 統一へ基礎つくった南北合意


 ソウルで開かれた韓国と北朝鮮の第五回南北首相会談は南北関係改善の基本方針に当たる「南北間の和解と不可侵および交流協力に関する合意書」に調印した。両国の分断以来四十六年にして、これまでの対決と相互不信の時代から平和共存の時代へと大きく第一歩を踏みだす歴史的な合意といえよう。世界でただ一つ残された同民族の分断の地である韓半島が統一へ向かう本格的な基礎をつくったともいえるものであり、われわれはこの合意を歓迎し、高く評価したい。


 画期的な北側の融和姿勢

 今回の調印は、一九七二年七月四日の自主・平和統一・民族大団結をうたった「南北共同声明」に続く、約二十年ぶりの南北政府間合意である。

 特に「南北交流・協力」の項では、資源の共同開発や合弁投資など経済交流と協力、芸術・スポーツ・新聞・ラジオ・テレビ・出版・報道などの交流と協力、国民の自由な往来と接触の実現、鉄道・道路の連結、郵便・電話・通信の交流などを確認している。これだけ広範にわたる相互交流を、これまで閉鎖的だった北朝鮮が受け入れたことは、こうした面から相互不信の根を氷解させ、統一の機運を一段と大きく押し上げることにつながろう。今後の具体的な実績を見なければならないが、まず同国の融和的な変化として受け止めたい。

 もちろん、今回ですべてが合意したわけではない。米国、日本はじめ国際社会が最大の関心事としている核査察問題については、合意書には盛り込まれず、今月内に板門店で核問題に関する実務代表による協議を持つとし、継続審議となった。ただ、共同発表の形で「双方は朝鮮半島に核があってはならない、との認識で一致した」と非核の原則を表明している。北朝鮮はこれまで核問題で徹底して強気一点張りだったが、この分野でも柔軟な対応を望むものである。

 それにしても今回の合意で特徴的なのは北朝鮮の変化である。南北首相会談は昨年九月の第一回から難航に難航を重ねてきた。しかし、今回は北朝鮮の会談に臨む姿勢がソウル到着の声明時からこれまでと違っていたという。合意書の妥結へ強い意欲を表明し、会談に入ってからは合意書の文案調整のための実務接触(十一日)でも韓国側が翌日へ延期を提案したのに対し、「夜明けまで続けよう」と継続したという。こうした双方の努力が最終妥結にこぎつけたといえよう。

 こうした北の変化は、東西冷戦の崩壊という大きな流れが背景にあったといえるだろう。それが、韓ソ国交樹立、日朝国交正常化交渉、南北の国連同時加盟と波及し、カンボジアの和平協定、さらに今度は韓半島に和解の波が及んだわけだ。

 また、北朝鮮の核査察の問題では、北側の譲歩を引き出すため米国と韓国が相次いで在韓米軍撤退など韓国内の非核化方針を表明してきたことも考えられる。さらに国家経済の厳しさなどを抱えていることから、孤立化を脱し、南北関係を前進させて日朝国交正常化交渉や対米関係を進展させることの方が得策との判断に基づき路線転換したものとの見方もある。

 こうした要因があったことは確かである。しかし、今回の北の変化はそれだけでは説明がつかないほどの転換といえないか。北朝鮮は主体思想により、金日成主席が脳髄、朝鮮労働党が中枢神経、人民は手足とする体制をとっている。「人民大衆は党の領導(金主席)を中心とし、組織思想的に結束することにより、一つの社会政治的生命体を成す」という国家論だけに、今回の北の大きな変化は金主席の「対南解放戦略」の転換、またはその放棄といったことが、その変化の直接的な要因とみられるのである。

 くしくも今回の南北首相会談での合意は、同会談に先んじて行われた世界基督教統一神霊協会(統一教会)創始者の文鮮明師と北朝鮮との間で合意された十項目宣言と大部分が重なる内容である。北側の姿勢変化はすでにその時に表面化したともいえよう。


 南北和解はアジア安定の要

 一方、こうした北側の変化は米国、日本へのシグナルとみてよいのではないか。米国のソラーズ下院外交委アジア太平洋小委員長(民主)が北朝鮮を訪れるが、この機会に北側からの何らかの対米姿勢転換の表明がなされるかもしれない。

 また日本は日朝国交正常化交渉が実施されている。渡辺外相は今回の合意を「日朝交渉にプラスとなる」と歓迎を表明したが、南北の歴史的合意が同交渉に良い影響を与えることになろう。

 韓半島は日清、日露戦争などの例を見ても歴史的に日本を含む北東アジアの和平、安定を左右してきた重要な地域であり、現在もそれは変わっていない。その意味からも、南北はこの合意を基にさらに具体的な交流、和解を進展させ、同地域の安定の要となることを期待したい。





















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