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御旨と海 なぜ我々はマグロを捕りに行くか
1983年 8月31日 グロースター


 ムーニー達が水産業を始めた事を誰もが疑いもなく知っています。そして漁を始めた結果、我々がどういう類の人間であるかということが漁師達にも分かるようになりました。雨でも晴れでも、どういう天候の下でも我々は出かけます。我々には女性の漁師すらいて、彼女達は男達と同様、ある時は男性達以上に実績を上げています。それがグロースターの漁師達の目に入らないはずがありません。

 確かに彼らはそのことを噂しています。そのニュースは広がり、市長を含めた市の役人の耳にまで達しています。先生が一九七四年初めてここに来て以来、過去十年間でどういう変化が生じたのかを彼らは知っています。当時マグロを捕る漁師達の一日の労働時間は、一般的に言って、朝十時頃海に出て行ってマグロが釣れようが釣れまいが午後二時頃には戻って来るというものでした。

 当時マグロには値段がついていませんでした。もしマグロを釣ったら、波止場に戻ってきてそこでマグロの隣に立って写真を撮り、それが終わればその魚を残したまま彼らは立ち去りました。一ポンド五セントにしかならなかったのでそれを売ろうと努力する価値さえなかったのです。時には、その魚は腐るまで波止場にそのまま置かれていました。

 また、毎年マグロの値がどの位の割合で上昇していったかも漁師達は覚えています。一年に十セントから十五セント、あるいは二十五セントあるいはそれ以下しか上昇しませんでした。値段が急激に上昇するようなことはありませんでした。ところが今年、一ポンドの値段は五j近くまで上がりました。この傾向は続くし、そのことを彼らも知っています。ほぼ間違いありません。彼らは我々のムーブメントがこの傾向に影響を与えたのだということも認識しています。

 もし一ポンド五jの値段のマグロを二百本釣ることができれば、我々は損得無しになるか、あるいはそれよりも良い状態になります。毎年我々が味わっている損失をもはや被らなくてもすみます。我々にはビジョンというものがあり、それが我々の努力を導いているのだということを知ってもらいたいのです。こういう状態をいつまでも続けさせるつもりはありません。我々は二、三年のうちに、こういう損失状態を乗り越えるつもりでいます。目の前にある結果を信じてはなりません。その過程を信じなさい。我々はある目標に向かって進んでいます。その目標を信じなさい。

伝統の確立

 我々は遂に利益を得るようになるまで、何年も何年も損を続けることができます。しかし他の人達はそれができません。彼らは一年か二年損をしたらやめてしまいます。我々は決して途中でやめません。それが我々の秘訣です。このプロセスがある点まで達すれば、損する代わりに利益を得ることができるようになります。その日が来れば、その日は必ず来るのですが、マグロに関する限り、レバレンド・ムーンは「王の王です」という絶対的確信を人々は持つようになります。

 我々は自分達が伝統を重んじる人間だということを知っています。我々の伝統はいつでも、まず確固たる基盤を造ることなのです。確固たる基盤無しには、どういう教会もビジネスも家庭も人間も成功することはできません。我々はこのことを知っています。今、彼らにはそれが分かりつつあるのですが、まだ我々が希望するほどではありません。しかし二、三年経てば、彼らにも先生のやっていることがはっきり分かるようになります。水産業が毎年上がったり下がったりするのではなく、毎年上昇の一途をたどるような伝統を先生が築き上げつつあるのだということを彼らは知るようになるでしょう。この努力が単に我々の利益のためだけにあるのではないことを、彼らははっきりと理解するようになります。

 アメリカのフロンティアは一つだけ残されています。それが水産業です。水産業は莫大な可能性を秘めています。世界の主要漁場の七〇パーセントまでがアメリカにあるということを誰もが知っています。残りの三〇パーセントはノルウェー、日本、その他の海洋諸国が共有しています。皆さんは全世界の漁獲高の七〇パーセントがどの位であるかを心に描くことができるかもしれませんが、漁獲高の重さと大きさをもとに考えれば、それが想像を絶する驚異的なものであることが分かります。海の七〇パーセントがアメリカに属していますが、海全体の大きさは、今我々が住んでいる陸地の二倍以上の面積があります。海は地球の三分の二を占め、陸地は地表の三分の一しか占めていません。我々が今まで陸上で得ることができた量を遥かにしのぐ蛋白質を、我々は海産物から得ることができます。もし賢明な捕り方をすれば、魚は毎年いつもそこにいることになります。地球上から石油のようなものを採掘する場合、取り尽くせば後には何も残りません。一方、魚の捕獲を意識的に行えば、水産業はとどまることなくずっと継続することができます。

 平均的なアメリカ人はこういうことに心を配るでしょうか。たいして心を配りません。彼らはこういうことに頭を使わないし、それが未来に対してどういう意味を持っているのかということも考えません。レバレンド・ムーンの次の世代は漁師になるのだと考えるアメリカ人は一人もいないでしょう。しかし皆さんはそうなるし、皆さんの次の世代、そのまた次の世代もやはり漁師になるでしょう。我々は世代から世代とますます優れた漁師になっていくことでしょう。ではなぜ我々はそういうことをやりたいのですか。人類のためになるからです。

 アメリカ人達はそのように考えていません。彼らは「私はこういう厳しい生活を送るけれども、私の子供達には敢えてこういう犠牲になる生活を送ってほしくない」と考えています。ある人々は、子供達が海に出ていくのを止めてすらいます。なぜでしょう。それは厳しい生活だし、収入も大したことがないからです。反対に、先生はこの同じ漁師達をどうやって育てるかについて考えています。結局、我々は彼らが今までの生活でやってきたのと同じことをやろうとしています。我々は彼らを受け入れ、彼らの面倒を見ます。我々は我々の成長速度と同じ速度でもって、彼らを引っ張っていくつもりです。

 水産業は現在も極めて重要な産業ですが、将来はなおさらそうなっていくでしょう。たとえ、我々の教会のメンバー達が他に何かやることを見つけ他の場所に行かなければならなかったとしても、我々はアメリカの漁師達が我々から確固たる基盤を造る伝統と精神を受け継ぐのを見届けなければなりません。そして、我々がしばらくの間ここを留守にしても、彼らをこのビジョン実現のために励まさなければなりません。

 今漁をやっている人々は、陸の上でやる仕事から得られる収入より五〇パーセント多い収入が得られない限り、自分達の仕事に満足することができません。この中には、船を使って海岸で働く仕事とか波止場で働く仕事も含まれています。なぜでしょうか。陸の上では、たとえ雨でもまた天候が思わしくなくても、自分のやることに計画を立てることができるのです。しかし、海の上ではそういう計画は立てられません。皆さんの方に働く準備ができていても、漁に行けない日もあります。天候が理由でそうなります。だから彼らはいつでも安定した収入に頼るというわけにはいきません。つまり長い目で見て、同じ額の収入を得るためには、陸の上で同じ時間を働いた場合に得られる収入よりも、少なくとも五〇パーセント多い収入を得なければならないことになります。悪天候を理由に失う日数を考慮に入れておかなければなりません。

 しかし実際にはどうかと言うと、最近漁師達は他の人達が陸の上で注ぐのと同じ労力を投入しているけれども、収入が五〇パーセント少ないことが多いのです。時には多いこともありますが、普通は少ないのです。その結果どうなるかと言うと、大抵のアメリカ人漁師は、少しでも漁よりましな仕事が丘の上に見つかればすぐにそれに飛びつき、結局は陸の上で働く方を選ぶようになります。だから、この水産業を維持していくことのできる人は誰であろうと、幾つかの重要な分野の管理をうまく行わなければなりません。

 まず、労働時間をどのように維持するかです。我々は普通の人より早く起き、できるだけ長く海上にいなければなりません。他の人達が一日しか働かなくても、我々は経験不足を補うために二日間働かなければなりません。二番目には技術です。我々は長時間労働をしているのだから、それを補うために、魚を運び入れるためのより優れた方法、より速い方法を見つけなければなりません。研究、調査、実験をしなければなりません。また新しい漁の仕方を確立しなければならないし、漁に関する幾つかの点を真剣に研究しなければなりません。そして餌、ライン、ラインの使い方、そしていろいろな海における船の使い方について研究しなければなりません。これらのことが全部研究され、そして実行に移されなければなりません。我々はこれらのことを真剣に考慮し、各分野について徹底的に計画を練らなければなりません。

マグロ釣りの技術

 マグロ船団に初めて加わった者達、手を挙げて。これが皆さんにとって初めてのシーズンなのです。皆さんの方が経験あるメンバー達の数より多いほどです。マグロが釣れるという期待を皆さんは持っていますか。自動的に、このように釣れると思っているのですか。先生はそう思いません。もし皆さん自身のやり方に任せておくならば、もし先生が面倒を見ないでただ皆さんを出港させマグロを釣らせるならば、皆さんは自分でできると思っているかもしれないけれども、実際にはそう物事は運びません。もし先生が皆さんに何も指示を与えず、一つ一つの細かい点を説明せず皆さんにすべてを任せておけば、皆さんは一本のマグロも捕ることができなかったでしょう。先生にはそれが分かります。皆さんにもそれが分かるし、経験ある漁師達なら誰でもそれと同じことを言うでしょう。

 それについて考えてみましょう。マグロ釣りで最も重要なものの第一は船です。ニュー・ホープ号はその一例であって、マグロを捕るには大き過ぎます。先生はそのために数度マグロに逃げられました。餌に食い付いた時、マグロが次にどの方向に行くか誰にも分かりません。ある方向に向かっていたマグロが急に向きを変え、別の方向へ行きます。方向チェンジをしてマグロの後についていく船としては、ニュー・ホープ号は大き過ぎます。速度も足りません。

 ニュー・ホープ号の後尾には二つのスクリューがついています。マグロが戻ってきて船の下を通る時、スクリューでラインを切ってしまうことがしばしばあります。マグロは逃げようとして気が狂ったようになります。ニュー・ホープ号は動き回り、それについていこうとするのですが、船が大きいので、それをするには時間がかかりラインがもつれます。またマグロについていこうとする時は、スクリューも回っています。だからラインがそれにちょっと触れるだけで切れてしまい、マグロは逃げてしまいます。

 先生は、何年もの間そのことを考え、「百パーセント、マグロを捕ることができるようにするには、この船をどう改善したら良いだろうか」と自問し続けてきました。その結果がワン・ホープ号のデザインとなったのですから、それは極めて重要な疑問だったのです。皆さんにもそれが分かるはずです。皆さんは既にワン・ホープ号の能力を試しています。この船はマグロを追いかけながら急旋回できるし、実際のマグロの大きさとあまり変わりません。他のたくさんの船の間を容易に通過し、動き回りながらマグロと闘うことができます。ニュー・ホープ号はそういうことができません。皆さんも既に経験したように、皆さんの船と他の船の間でラインが絡み合った場合、その取り扱い方が他の船より極めて容易です。

 以前は、そういう時には必ずラインを切らなければなりませんでしたが、そういうことをすればマグロ釣りはとても高価なものになります。すべてのラインを切れば千ドル近くになります。自分達のためでなく、他の漁師達のためにもそういう損失は防ぎたいと先生は思ったのです。彼らだって自分の道具を失えるような余裕はありません。先生の第一の関心は、マグロが食い付いてきた後、ラインを切らなくても済むようにするためにはどうしたら良いのだろうかということでした。こういう問題があったので、皆さんはニュー・ホープ号では働けませんでした。もし皆さんがバウ(船の前端に近い部分)の一方にいて、マグロが船の下を潜って反対側に向かった場合、ラインをそれに合わせて移動させるのは非常に難しいのです。それがもつれている時は特にそうです。そして、マグロ釣りは高くつき過ぎることになります。

 船の設計、デザインをする前に、皆さんはこういうことを全部考慮しなくてはなりません。またどういう種類の魚を捕りたいのか、どういう種類の船を設計するのかということは合わせて考えなければなりません。最初、我々はこのラインの問題が心配でした。それでこの問題を念頭において、船を設計しなければなりませんでした。先生の最初の考えは、もつれるのをどうやって防ぐか、あるいは避けることができるかということでした。その次にもつれた後、どうやって速かにそれをほぐすことができるかということを考えました。皆さんがしなければならないことは、マグロが食い付いた時、そのラインをまだ水につかっている他のラインから離しておくこと、そしてそれを確認することです。そうしておけば、他のラインを引き上げることをそれほど心配しなくてもすみます。最初の人がバウの所でマグロのかかったラインを繰り、その間にもう一人が他のラインを引き上げることができます。なぜこれがそれほど重要なのですか。大抵の人はこのもつれの問題を解決できなかったので、我々が漁を始める以前は一本か二本のラインしか使っていませんでした。

 先生は五本、六本、七本さらに十一本までのラインを使いたいと思いました。魚を捕れるチャンスがそれだけ大きくなるからです。我々はこの問題を解決したので、それだけ多くのラインを使って漁をすることに先生は自信を持っています。

 海の深さと海流に応じてラインの間隔を一定に保つというのは専門家の技術なのですが、我々はそういうものも開発しました。さらに、我々が今使っているラインは完璧な作りになっています。ラインは切れないし、フックも延びたりしません。こういうこともすべて我々が開発しました。皆さんはラインを見て不思議に思ったかもしれません。なぜそのように作られているのか、不思議に思ったかもしれません。その理由は速かにラインをほどくことができるようになっているのです。ほどくことができれば、ラインが切れたり、それを失ったりすることを防ぐことができます。

 ラインは手入れを良くすれば、十年から二十年は持ちます。こういうものにはすべてこつがあることを皆さんは知っていなければなりません。そして皆さんはそのことを開発すべきです。今年が皆さんのマグロ漁の最初の年です。船に乗った時、なぜ船の中のものがそのようになっているのか、皆さんにはすべてが分かっていたわけではありません。しかし皆さんはそういう方法で釣りをしながら、次第にそのやり方を学んでいきました。そして今、皆さんは七年間の経験を獲得したことになります。つまり今皆さんは、いわば一シーズンを終えて、漁生活七年目に入ったということになります。

 今、先生は皆さんに船の大きさとマグロ用ラインの技術について、先生がどう考えてきたのかを説明しましたが、三番目として、先生はアンカー・ラインについて考えました。もし水の中にいるマグロの立場に自らを置いて考えるならば、皆さんにも多くのことが分かってきます。あらゆる種類のラインが垂れ下がっているし、また数多くのアンカー・ラインもあります。マグロはラインに掛かったならば、アンカー・ラインの方に突進し、アンカー・ラインの回りにラインを巻き付けてフックから逃れようとするでしょう。

 最大の問題は、マグロのすぐ近くにある皆さんのアンカー・ラインです。いったんマグロが食い付いてきたならば、どういうことがあっても、皆さんはラインを離すわけにはいきません。マグロはいったん逃げてから急旋回して、アンカー・ラインに突進してくることがよくあります。アンカー・ラインがまだ船につながっている間にマグロが戻ってきたならば、ラインは切られてしまいます。我々はこれを経験によって知ったのですが、そういうことが起こったら、皆さんはラインを少し弛めなければなりません。しかしそうすればマグロを逃がす危険性が大きいのです。しかしアンカーが既に皆さんの船から離されていれば、マグロはただラインの周りにアンカー・ラインを巻き付けるだけですみます。皆さんはブイの所へ行ってアンカー・ラインをほどかなければなりませんが、船につながっている時ほどにはピンと張っていないので、ラインが切れるようなことはありません。

 アンカー・ラインをほどくことは、マグロとの闘いで皆さんがしなければならない最も重要な作業の一つです。いったんアンカー・ラインを外したら、魚を捕えるチャンスははるかに大きいものとなります。皆さんと魚の一対一の闘いです。皆さんはいつも、マグロのかかったラインをピンと張っておかなければなりません。いったん弛めると、簡単に魚を逃がしてしまいます。マグロが海面に姿を現すかもしれません。マグロが食い付いたからには、皆さんはそれを引き続けなればなりません。マグロはその反対方向に逃げようとします。しかし、いつもそのようになるとは限りません。時にはマグロは皆さんの方向に戻ってきてから急にグィッと引き、口からフックを外そうとします。

 マグロと格闘する時にはいつでも、その口からフックが外れないようにすることを念頭に置かなければなりません。ニュー・ホープ号は今年の夏、六本逃がしましたけれども、そのうち三本がそのように逃げました。マグロがラインの張力から逃れることができ、フックを口から外すことができたからです。皆さんの船をブイ・ラインから離すことができさえすれば、皆さんがその魚を釣り揚げる可能性は九〇パーセントになります。皆さんは船の上にいるのですが、それでも水の中にいるマグロの姿を心に思い描き、どのように行動するか分析しなければなりません。先生はマグロ釣りをどう解釈すべきかということだけでなく、その技術についても、すべて皆さんに教えようとしているのです。調度、皆さんはもう一度学校に戻ったようなものです。学んでいる間は、その瞬間は皆さんには理解できなくとも、後になって「ああ、先生が言わんとされたのは、こういうことだったのか」と思うようになります。皆さんはこの夏の終わりまでに、先生が教えようとしていることを理解することができなければなりせん。

 考慮すべき最後の点はもり打ちです。皆さんも知っているように、魚を確実に船の上に釣り揚げる目的でもりを打ちます。魚にもりをうまく打ち込むことができたならば、次に皆さんのやることは、その魚をできるだけ早急に船の近くまで持ってくることです。マグロは疲れかかっているし、皆さんも引き続けているので、この最後の瞬間にマグロは船の近くの海面上に浮かび上がってきます。それからマグロはそこで行われていることをちらっと一瞥(べつ)します。そして人々や船、またあらゆるものを見ます。マグロにとっては全く不思議な光景です。こういうことがあると、マグロは最後にもう一度強く動いて海の底へ潜っていきます。皆さんはこういう予想しておかなければなりません。その場合は引くのではなくて、マグロが必要とするだけのラインを与えてやります。しかし弛めてはなりません。これはマグロにとって生き残るための最後のチャンスなのです。それから船の所まで引っ張ります。その時、マグロはよく一度海の底に真っすぐに潜っていきます。こういう事が一度ならず二度三度、あるいはそれ以上起こるかもしれません。しかし日本のメンバー達にはこれが理解できませんでした。 いったんマグロにもりを打ち込んで船の近くまで引いてきた以上、また海の中へ離すということは不名誉なことだと彼らは考えていました。しかし、本当はそうすべきではありませんでした。皆さんはその魚を上手に取り扱い、次に何をしようと考えているのか予想しなければなりません。これをしなければ、皆さんはもっと魚を逃がすということになります。魚を逃がすということは、何千ドルかを失うということを意味しています。あるいはさらにひどくなって、魚の命も同様に失うことを意味するのかもしれません。

マグロ釣りは訓練である。

 ある人達にとっては一本のマグロは一カ月分の給料よりも多いのです。皆さんはこのことをもっと真剣に考えなければなりません。もし皆さんが五千ドルの現金をポケットの中に持っていたとしても、それを海の中に落としたならば、皆さんはどんなに悲しむでしょうか。そのことを考えるべきです。マグロの場合には、皆さんはお金だけでなく、マグロの命すら失うかもしれないのだからさらにもっと深刻です。我々は他の誰よりも真剣なんですが、そういう真剣さは本当に重要です。もし我々が真剣さや尊敬の念を失えば、マグロに逃げられてしまいます。マグロ釣りは、魚釣りの技術の中でも最高の技術を必要とします。もちろん皆さんは、漁についての知識をほとんど持たずに始めたのですから、こういうことを全く知らなかったかもしれません。しかし先生がそれらを説明した現在、皆さんもそれについて考えてみなければなりません。これらの技術は皆さんがどこへ行こうとも、漁をしていようと水産業に携わっていようと、その他の仕事についていようとも、いつも皆さんと共にあります。それは皆さんが心の姿勢について学んでいるからなのです。

 将来皆さんが何をしようとも、どういう問題を抱えることになろうとも、皆さんはここで学んだ教訓と関連づけるので必ずそれを解決することができます。また他のどんな漁についても、皆さんはこれを適用することができます。分かりますか。少々抽象的すぎるかもしれませんが、水産業の中で他のどういう分野にも適用することのできる思考方法を皆さんは学んでいるということです。実際、どういう種類の活動にもそれを適用できます。

 皆さんも既に経験したかもしれないけれど、こういう漁のやり方には速やかな決断が要求されます。数分間の猶予も与えられません。時にはその瞬間に決断しなければならないこともあります。一人の人間の命が皆さんの決断にかかっているかもしれません。間違った動きをすれば、何かとても危険なことが起こるかもしれません。我々はいつも真剣に考えなければなりません。浮わついた考えをしてはなりません。これは将来起こるかもしれない命の危険について言っているのです。いついかなる時も、何か緊急事態の起こる可能性があります。皆さんは自分の命について、こういう考え方をしておかなければなりません。実際、一瞬一瞬が真剣です。

 さらに、皆さんは一体化についても素晴らしい教訓を学びました。船の上にいるすべての人々が一体化し、船全体が調和を持って働いていれば、誰もけがをしないし、フックからマグロが逃げることもありません。マグロが食い付き、そして引っ張ります。そして皆さんも引っ張ります。その時皆さんは十のこと、あるいはそれ以上のことを考えています。皆さんは引っ張っている時「次はこうだ、その次はこうだ」と先のことに素早く思いを巡らせなければなりません。

 皆さんの心の中ではすべてのことが同時に起きています。次に何をすべきかをはっきりと皆さんは知っていなければなりません。例えば、ジンソン(珍成)のフックにマグロが掛かりました。彼らは引っ張り始めましたが、彼の頭の中にあるのはそれだけでした。マグロが海面に姿を現したけれども、誰も他にどうやったら良いのか知っている者はいませんでした。彼らはただその周りに立っているだけで、ラインが至る所に垂れ下がっていました。皆さんは自分がそういう立場にいたらどうすべきかを決定しなければなりません。

 すべてのことに絶えず思いを巡らし、今やっていることに意識を集中しなければなりません。皆さんが何をやるにしても、なぜそうするのか、いつも知っている必要があるし、次に何をすべきかについても絶えず考えていなければなりません。そして、これらのことが全部同時になされなければなりません。先生はこれらの技術について長い間とても真剣に考えたのですから、皆さんにもそれを習得してもらいたいと思っています。重要なことです。一瞬たりともおろそかにしてはなりません。そうしないと、皆さんは機会を逃がすことになるかもしれません。それを皆さんに知ってもらいたいのです。

若者と将来に投資する

 なぜ我々はマグロ釣りをしているのですか。他にもヒラメやサケなど、漁に適したいろいろな種類の魚がいます。いつの日か皆さんはそういった魚を全部捕るつもりでいるのですが、先生はまず若者達の創造力をいかに捕えることができるかを考えています。若者が少なくとも三本のマグロを捕ったら、残りの人生はそれに釘付けになるでしょう。夏がやってくるごとに、その人は漁に行きたいと思うようになります。彼らは「陸の上はとても暑くて蒸し蒸しするけれども、海の上はとても静かで美しく、時には冒険的だ」と考えています。その若者はどうしてもそれに引き付けられてしまいます。

 ムーニー達は基本的にはこの世の人達と同じなのです。少しはましかもしれないけれども、基本的には同じです。いずれにせよ、我々の人生には時々刺激が必要です。そう思いませんか。我々はマグロ釣りをすることによって、今までずっとお金を失っていますが、先生は決してそれを心配していません。先生は決してラインを離さないし、この自分の信念も絶対に放棄したりはしません。マグロはこの伝統を確立する上で最も優れた種類の魚だということを先生は知っています。一人の人間を、急激に一夜のうちに、また一年間で変えてしまうようなものは何もありません。ここの平均的なアメリカ人の若者が、それを心に留め応用することができるようになるには、少なくとも十年かかるということを先生は知っています。特に海に関してはそうです。海を愛するには一年、二年、あるいは三年かかります。長い年月が経った後、皆さんは「そうだ、これが私の未来だ」と言えるようになります。

 いったんマグロ釣りの方法が分かるようになったら、何ものもその興奮を抑えることはできません。このことを知っている人がマグロ釣りについて話し始めたら、彼は穏やかに話すことができず興奮してきます。そしてマグロがラインに掛かってきた瞬間を再現し、格闘のあらましを詳細に説明しないわけにはいかなくなります。皆さんは笑っているけれども、それは皆さんがそういうことについて既に知っているからなんです。これはマグロを釣ったことのない人々にも良い影響を与えます。マグロがアンカー・ラインの所にきてラインを切った瞬間、その時ちょうど皆さんがそのラインを力いっぱい引っ張っていた時だったというようなことが時々起こります。その時皆さんは船の上にひっくり返って、体をしこたま打ちます。こういうことは、本当に人生を満ち足りたものにする経験です。我々はたくさんのお金を失っても、それを心配したりはしません。

 我々は一年とか二年だけ漁をするのではありません。我々は未来を、これが広がり始め、さらに多くの人々が参与するようになる十年後よりさらに未来を見つめています。それからアメリカの若者達の目が海の方に向き始めるようになります。先生はそのように確信しています。それを確実なものにするために、我々は少なくとも十年間費やして基盤を築かなければなりません。我々がそうすれば、人々は我々の運動にきやすくなるし、我々の経験から利益を得ることもできます。我々も自分自身の運動の中でいろいろ学ばなければなりません。先生はまず自分で漁を始め六、七年それを続けた後、オーシャン・チャーチを始めました。最初オーシャン・チャーチの指導者達はほとんど何も理解できませんでしたが、今では彼らのうち何人かは理解できるようになりました。彼らはある程度成熟してきたのです。そう思いませんか。だから今こそ、我々がより多くのお金と努力の投入を開始することのできる時なのです。

 先生はいつも皆さんより先を歩いています。将来何をすべきかについて皆さんが何も考えていない時、先生は海に出てマグロの釣り方を学んでいました。今皆さんはマグロ釣りをやっており、先生は既にアラスカにいます。アラスカは特別な場所です。そこには夜がありません。だから皆さんは文字通り夜を徹して働くことができます。その間ずっと釣りをしています。アラスカではオヒョウが釣れます。その重さは百五十ポンドぐらいですが、オヒョウは平べったいのでマグロほどの大きさがあります。マグロはフックに掛かったら、ただ真っすぐに引っ張るだけですが、オヒョウは突然ぐいと引きます。皆さんが本当に釣りが好きならば、一度アラスカに来ただけで、皆さんは「プロビンス・タウンは忘れてしまえ、グロースターは忘れてしまえ」と言うようになるでしょう。

 そこにはいろいろなものがあります。例えば、タラの群れは海をさまざまな色で彩ります。彼らはまるで一匹の大きな魚のようになって移動します。十分大きな網があったとしたら、何百ポンドという魚が捕れることでしょう。皆さんはそれを捕る方法を見いだし、そして全世界に配らなければなりません。そこから皆さんはアメリカの水産業のための新しい伝統を築くことができます。なぜ我々がマグロ釣りをするのか、その理由を皆さんは少しは理解できるようになりましたか。マグロは最初に捕る魚として最適なのです。マグロ釣りの技術を徹底的に学習しさえすれば、他のどういう種類の魚に対しても確信を持って当たることができます。確信を持って釣りをすれば、皆さんは水産業全体を復活させることができるし、またそうすることによって、アメリカを復活させることになります。それが先生の皆さんへの希望なのです。























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