神様の摂理から見た
  南北統一

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七.今日のソ連と我々

1 ソ連の世界赤化戦略と今日の現実

 今日我々には、北韓とソ連による侵攻の危険が常に付きまとっています。皆さんもご存じのように、ウラジオストックは冬になると凍りついてしまうので、冬にも凍らない不凍港となる韓半島が必要なのです。それに加えてソ連が韓半島を手に入れるならば、日本は地政学的な面において自動的にソ連の影響圏に入るようになります。そこでソ連はアジアを制圧するために、どうしてもまず韓半島を手に入れようと心を砕いているのです。

 アフガニスタンにソ連がなぜ侵攻したのか知っていますか。中共を牽制するために侵攻しました。中共が勢力を拡張するようになるであろう今後十年、十五年くらい後には、莫大な犠牲を払ってもソ連が中共を防ぎきることが難しくなるのです。そのうえソ連との国境に隣接しているあらゆる国家が反ソ体制化しつつあるために、中共が反ソ連合体の旗印を掲げるようになれば、一時に連盟体がつくられる可能性があるのです。

 今中東において進行中のイラン・イラク戦争においても、勢力を拡張しようとするソ連の陰険な戦略がその背後に伏線となっています。そしてインド洋における基地の確保とか、日本や東南アジアにおける戦略はすべてソ連の世界赤化戦略の一環であるということを知らなければなりません。

 皆さん、もし日本がソ連の勢力下に入るようになれば、韓国がどうなると思いますか。そして金日成は出てくると思いますか。実に深刻な問題と言わざるを得ません。

 このような時に、蘇満国境付近で韓国の僑胞が二百万人ほど住んでいるという事実は、全く不幸中の幸いであると言わざるを得ません。なぜなら我々がこの僑胞社会と協力することさえできれば、この僑胞社会を通して中共とソ連の争いをあおり立てることもでき、また中共やソ連との敵対関係において我が国が彼らを防波堤として利用することもできるからです。私はこのような可能性をあらかじめ知っていたので、そのための対策を人知れず立ててきたのです。(一九八〇・一一・一)

 今日諸スラブ民族が共産主義を目指して突き進んでいます。共産主義をよく観察してみると、世界の資本主義を打倒し、自分たちがその後を継がなければならないという思想のもとにつくられています。それゆえ厳しい試練の過程を克服しながらも絶えることなく続いてきたのです。しかし、資本主義の世界を克服して吸収することのできる基盤を、ソ連をはじめとする共産圏に建てることができませんでした。また、資本主義の体制である民主世界は内的な思想基盤、宗教の基盤があるのですが、それも共産主義を消化できる基盤となることができませんでした。このような観点から、相反する二つの世界に責任をもとうとする人は必ずこの二つの世界を果たして消化することができるのか、それともできないのかという試練の過程にぶつかることになるのです。それで先生は今回韓国に来て、このような全体を決算しようとしたのです。(一九八六・五・六)

 見なさい。今世界の強国、世界問題として取り上げられる諸国家の中で四大強国と呼ばれるものがあるとすれば、それはアメリカであり、それからアジアでは日本なのです。その次に共産主義世界においてはソ連です。次には、現在世界に四十億の人類が住んでいるのですが、人口の面から言って最も多い国がどの国ですか。(中国です)。中国です。人間の数の面では中国、科学技術においてはアメリカ、また経済においては日本、そして外的な思想の基準においてはソ連です。(一六四―五七)

 解放直後にソ連共産党のスターリンの拡張政策を中心に五〇年代に発展してきた環境を見て、あのソ連を全部弱体化させなければならないと決心したのです。私には基盤がないので、その代わりに天が打ち下ろすのです。アメリカを打ち崩し、ソ連もその時が来れば崩すのです。それゆえ協会創立三十年を過ぎてソ連の滅亡を宣布するのです。自由民主世界の滅亡については、アメリカに行ったその日から宣布しました。下っていかなければ復帰摂理の時がかみ合わないのです。今この時に、ソ連を収拾する者がいません。いかにソ連が共産主義理論を中心として世界制覇を夢見、プロレタリアート独裁政権を中心にブルジョア世界を消化すると主張しても、それはすべて妄想であり、妄動であり、かつ妄言にすぎないのです。そのようなことは既に失敗して、単なる法螺にすぎない時代が来たというのです。

 世界を主導するソ連共産党を見ても、共産党の最高幹部たちは共産党員ではありません。共産党時代は既に過ぎ去ったということを彼らが自ら証明して見せているのです。それゆえゴルバチョフが今、西欧社会に対する開放政策を打ち出しているのです。(一六三―一五四)

 今この時が問題です。どのような時でしょうか。大韓民国自体も問題ですが、日本も問題ですし、中共やソ連も問題ですし、アメリカもまた問題なのです。世界を指導する諸国家が現在どのような状態なのかと言えば、「ああ、世界を手に入れてみればみたで、これもまた心配だ。世界まで進出してきて、これを連結させればすべてがうまくいくと思ったのに、連結されたことそれ自体が今では心配の種だ。後退だ、後退!」こうなっているのです。最後の時なのです。

 ソ連は一つの世界、理想的なユートピア世界を模索してきました。世界を前にして経済的、あるいは政策的な面においてあらゆる支援を行い、力を補給する源泉となってきたのですが、今やあまりにも問題が大きくなりすぎました。内外共にこれを収拾する方法がありません。後退するのです。キューバに対する支援を削減する問題、第三世界に対する支援を削減する問題が起こってきたのです。またソ連自体内の疲弊した思想的崩壊という問題を収拾することのできない段階にまで来ているのです。ソ連もそうですが、アメリカも同じなのです。

 ソ連の指導者たちは本当の共産党員ではありません。共産党時代は既に過ぎ去りました。マルクスとレーニンが主張したそのような世界、ユートピア的な統一理論、そのようなものはみな過ぎ去ってしまったのです。現実的な生活の舞台において実現不可能であるという事実が、科学的なデータに基づく統計によって既に動かし難いものとなっているのです。世界はそのように見ているのです。(一六八―八四)

 ソ連共産党は自分がねらいをつけた国はすべて征服してきました。しかしながら韓国で失敗し、統一教会と勝共連合が活動する所でも追い出されるようなありさまなので、我々を自分たちの第一の敵と見なしたとしても至極当然なことと思われます。日本共産党は、日本の勝共連合と大学街における(全国大学連合)原理研究会(CARP)によって追い出されたことを契機に、統一教会を警戒し始めました。アメリカにおいても自分たちのもつあらゆる組織を失ってしまいました。フレーザー委員長を立てて統一教会をアメリカから追い出そうとしましたが、かえって自分たちの条件が崩れてしまったのです。ヨーロッパにおいても共産党と何回か衝突しましたが、今ドイツでも彼らは追い出されつつあります。(一九八八・一・一)

2 ソ連共産党の滅亡を宣布せよ

 韓国の学界を中心に統一教会という看板を掲げてみても希望が大きいというのです。私が希望が大きいと言ったからといって、ここに「文牧師は宣伝がうまい」と言うような者はいないでしょう。

 どれほど私に度肝を抜かれたことでしょうか。シカゴ大学の有名な政治学博士であるモートン・カプラン氏を立ててソ連の滅亡を宣布するように言った時、彼が我々の側の責任者を三回も呼び出しては「ソ連が滅亡すると直撃弾を撃つのではなく、間接弾を撃ちましょう。宣伝は行うにしても曲線弾を撃ちましょう」と言うのです。直撃弾は嫌だと言うのです。このようにしてハーバード大学ともう一つ、有名な名前の大学のソ連専門家が何人か後退したのです。

 それで「後退する、ではだめだ!」と言ったのです。彼は三回もダンベリーに来て懇願しましたが、撤回するように言いました。「あなた方は先生を何だと思っているのか。これを発表すればソ連が滅ぶのだ。発表してしまいなさい」と言ったので、仕方なしに宣布したのですが、最近になって「わあ! 文牧師には角がないと思っていたのに、角があるにはあるのですね」と言うのです。つまりアンテナがないわけではないということなのです。政治学のあらゆる見地からソ連を批判し、そのような学者たちが会合を開いて結論を出した結果について、そのすべてが間違っていると言ったのですが、このような文牧師の主張が全部的中したのです。語ったことがすべて的中するというのです。こうして今ソ連が改編されようとしているのです。体質改善を行って、すべて改編されるのです。(一六八―三九)

 ジュネーブにおいてソ連の滅亡を宣布しました。宣布を行えば天の摂理が、運勢がやって来るのです。騒ぐ時は歴史上にかつてなかったほど騒ぎまくって、神様が寝ていても目を覚まして起き出して、見物しないではいられないほど騒いで初めて、そこに神様の運勢が開きます。すべてそのようになっているのです。(笑い)だから騒ぎたてなければならないのです。「ソ連滅亡!」。世界の大学者を通してソ連政府の没落を発表せよと言うのです。それをダンベリーで行ったのです。ダンベリーの監獄に入って、そこから出てくることは考えもせずに、気が違ったように「ソ連共産党滅亡!」と宣布せよというのです。これはもう狂っていると言うほかないでしょう。しかし私は平面世界は見ません。立体世界を見るのです。皆さんにはそのような世界がないでしょう? 霊界を知らないでしょう? 霊界を知っているという点においては、世界のどのような宗教家も私に学ばなければなりません。(一六八―三四)

3 モスクワは我々が行かなければならない所

 今は韓国が問題ではなく、共産党を何とかしなければならない問題が残っています。あのモスクワを誰が解放するのかというのです。楽に座って、口先だけ動かしていればモスクワが解放されますか。統一教会の食口たちの中には、共産国家で地下活動をしていて監獄に入った人が数十名になります。このようなことを知っている先生が、どうして平安な生活を送ることができるというのでしょうか。(一九八六・三・九)

 我々は世界を救わなければなりません。自由世界のためだけに働くのではありません。モスクワに行って共産主義者たちも救わなければなりません。(一九八六・三・九)

 皆さんはこのことを知らなければなりません。アメリカを立てて何をしますか。我々がアメリカに定着し、世界を支配しようというのではありません。これはモスクワに行くための最後の作戦です。モスクワを解放しなければなりません。モスクワを解放しなければならないのです。そうして初めて神様が解放され、真の父母が解放されるのです。そののちには迫害はありません。そののちには世界は完全な平安の時代が訪れるのです。黒い雲もなく、太陽時代も過ぎて、神様の愛によって光り輝く永遠なる平和の天国へと進むのです。永遠なる愛を中心として平和の世界へと行くのです。(一六一―一九四)

 文牧師は何を成さなければならないのでしょうか。このように人々を指導して、アメリカを救うことによって栄光の座が与えられるようになったなら、どっかりとアメリカの上に腰かけて「やっと全部終わった」と言おうというのではありません。アメリカを越えて世界に出ていく道を受け継がずに、ここでストップするならばすべて壊れてしまうのです。アメリカにおいて勝利の基盤を整えてから世界を救わなければなりません。アメリカの勝利に合わせて世界を救うための行動を成さなければ、神様の摂理とはずれてしまうのです。そこでワシントン大会が終わるや否や「モスクワ大会」を宣言し、そこに向かって進む準備をしているのです。あの時から今まで共産党を打ち破り、モスクワに対する勝利圏を準備しているのです。

 それなら文牧師の目的は何ですか。モスクワを中心にどこまで行きますか。神様の胸まで、神様の計画する目的地まで行くのです。モスクワを越えて、その次には世界を一つとし、天と地を一つとしなければなりません。(一六一―一九六)

 「ワシントン大会」で勝利したあかつきには、どこに行って勝利しなければならないのでしょうか。その次には戦うことがないですって? (笑い)(モスクワに行かなければなりません)それはまともな答えですね。皆さんはモスクワ、モスクワと言いますが、私は「マスト・ゴー(must go;行かなければならない)」、です。モスクワはマスト・ゴー・ゼアー(must go there;行かなければならない所)です。(歓呼、拍手)

 皆さんは知りませんが、共産党はこのことを知っているので文牧師を最も嫌うのです。このようなことを見る時、文牧師に対して共産党が反対するその積極的反対より以上に、文牧師に対する若い人たちの積極的な支持が、もっと大きくなければ勝利することができないのです。モスクワへ行くことができないのです。皆さんの力がもっと大きくならなければならないのです。皆さんの力が共産主義者たちの力よりも大きくなければなりません。(七九―三〇五)

 イエス様の弟子たちは全員、み旨のためには縛り首になろうともローマへ行くと言ったのです。あなた方は縛り首になると言ったらどうしますか。イエス様の弟子たちよりも劣るつもりなのですか、それとも彼ら以上にやるつもりなのですか。(彼ら以上にやります)。モスクワへ行きますか。(はい)。私は、皆さんがモスクワへ行かなければならないと言ったのですよ。(笑い)これは笑いごとではありません。(八一―一一六)

 これからは文牧師が大会を行う場所がないのです。日本においても大きな広場をいっぱいに埋め、韓国でも大きな広場をいっぱいにし、世界の中心であるアメリカにおいても八大都市の広場を埋め尽くし、ヤンキー・スタジアムを埋め、このワシントンを全部埋め尽くせばもうすることがないのです。霊界に行ってからでもやるなら別ですが。「モスクワ!」。モスクワは皆さんが行うのです。(八八―一二五)

 皆さんは義勇軍として、戦いに臨む将軍として、どうか神様の権威と人類の権威を喪失することのないようお願いします。今我々にはヤンキー・スタジアムが問題ではありません。ワシントンが問題ではないのです。それを越えて共産世界のモスクワまで、神様の胸に抱かれることのできる最後の前線に向かって前進することを、日々心に誓う皆さんとなるようにお願いいたします。(八一―一四五)

 以前に何と言いましたか。そう、モスクワ(Moscow)は「マスト・ゴー(must go)」と、私が言ったでしょう? これを誰かが提唱しなければなりませんが、誰がしなければならないのですか。これを誰がやらなければならないのですか。(女性たちです)。今まで歴史上女性たちは名前がなかったのです。名前がなかったというのです。(八一―三六)

 私が各国の女性たちを数万名動員して「気をつけ!」と言うなら「はいっ!」と答え、「敬礼!」と言うなら「はいっ!」と答え、「あのモスクワに向かってマスト・ゴー(must go)! いざ出陣!」と言えば全員が出陣しなければならないというのです。さあ、これは強制されてそうするのですか、自ら進んでそうするのですか。それを考えなくてはなりません。(八一―三七)

4 モスクワ大会に対する我々の計画

 神様は打たれて奪ってくる歴史を来ていらっしゃるのです。先生が監獄に一回入って出てくれば、統一教会は一段階ずつ上がっていきました。韓国においてもそうでしたが、アメリカに行ってダンベリー監獄に入って出てみると、アメリカの宗教界ばかりでなく、朝野が進んで歓迎しました。これは下がっていったのですか、上がっていったのですか。ひたすら上がっていったのです。今やモスクワの監獄に一度入って出てくれば、天に直行することでしょう。飛翔天するのです。

 先生のモスクワ大会は日を置かずして行われます。今回「サミット・クラブ」を創設したのですが、前職の大統領や首相を約五十名招請してゴルバチョフに会うつもりです。ソ連の共産党の幹部たちは「サミット・クラブ」を歓迎せずにはいられないでしょう。先生は議長団の一員となって訪問することになるでしょうし、ゴルバチョフに会えば彼と対話を通して説得するつもりです。先生が説得されると思いますか、彼が説得されると思いますか。

 先生の生涯の中には後退という言葉は存在しません。これまで世界を駆け巡りながらも、一度も後退することなしに前へ前へと押し続けてきました。先生とアメリカ国民二億四千万とが戦いましたが、結局はアメリカ人たちが押されてしまいました。原告はアメリカ合衆国で、被告は文鮮明先生でした。今やアメリカは、歴史時代にアメリカの文化が残っている限り、文牧師の前に許しを請わなければならないでしょう。(一九八八・一・一)

 先生の祈祷は全部公式化されています。たくさん祈祷するのではありません。目をつぶって、さっと行えばもう既に天が共にあるのです。ですからただみ旨のために走るだけです。祈祷するよりも走るのです。考えるよりも実践するのです。

 この間、私がソ連まで行くことのできる道を整備して来ました。頂上会議を中心に大統領を約五十名ほど率いて、私が団長になって「行く」と言うなら「来い」と言うようになっています。来るなと言うようになっていると思いますか。ポーランドのような衛星国家の教授たちを連結して、我々のアカデミーをつくるのです。世界の有名な芸術家まで連結するのです。それで有名なバレリーナを連結させてユニバーサル・バレエ団をつくったのです。全部連結してみれば、ソ連のあらゆる人々が引っ掛かってくるようになっているのです。完全に結びつけることができます。

 そうするためにはお金が少しかかるでしょう? このような人たちを前面に立てて、ソ連のボリショイ・バレエ団と競い合うことのできる新しいチームを作るのです。そうして彼らが一回公演すれば、我々が一回公演するというように、交替でするのです。そのような準備もしなければならないのです。共産党の手を煩わさずに消化しようと思えば、一つだけではできません。文化的にも全部交流しなければならないのです。その次に体育の面でも交流しなければならないというのです。(一六六―九四)

 今や共産圏を立て直さなければならない時です。私は「モスクワ大会」を宣布するために、あらかじめモスクワに行くことのできる準備として、「科学の統一に関する国際会議」も開催したのです。また「弱小民族協会」をつくって、前首相、現職首相協会をつくり、私が団長になって五十余名の前・現職首相を帯同してモスクワを訪問しようと考えているのですが、ゴルバチョフもこれを承認せずにはいられないというのです。その時には、ヨーロッパの機動隊員を数千名連れて行ってモスクワ大会を行うことができるでしょう。ソ連の警護官を入会させておいて行うのです。

 そのことを今私が準備しているのです。できるか、できないか、やってみようというのです。私がこのような話をするので、国内の多くの人々は「統一教会の人たちは国内の問題を越えて世界的な問題に取り組んでいる」と言います。ほんの十年前までは夢のような話だとばかり思っていたのに、今になってみればその話が的中していたというのです。(一九八六・一・一)

5 ソウル・オリンピックを通じたソ連の戦略

 韓国が統一時代を迎える前に、政局の混乱時代が来るかもしれません。特にこの時期はソウル・オリンピックが終わってから少しずつ深刻化するように思われます。光に満ちた朝が来る前にやって来る夜の暗闇のように、政局が混乱の時点を迎えるのではないかと予見されるのです。

 ソウル・オリンピックが終わるころにソ連をはじめとする東欧共産圏との関係が成立し、それによって共産勢力とその影響も一緒にくっついて来ることになるでしょう。それゆえ南北統一に対する雰囲気が熟し、南北総選挙による統一の方案が論議されるようになることと思われます。一方与党と野党の間には国益よりも相互間の感情的なしこりがわだかまっていて、急変する世界情勢に共同で対処するのがなかなか難しいのです。そのため韓国はややもすると南北統一問題に関して主導性を喪失するかもしれません。そうなれば国民たちは相当な混乱に陥るおそれがあります。

 ソ連をはじめとする東ドイツなどの共産国家は、ソウル・オリンピックにおいて競技面でアメリカをはじめとする自由世界を圧倒して優勝するためにあらゆる方法を動員しています。アメリカはソ連に対してあらゆる面において劣勢を免れないでしょう。アメリカは軍事力、オリンピックにおける競技力、思想などの面でソ連に後れを取り、ソ連はこのような内容を自国の体制の宣伝に最大限利用することでしょう。

 思想戦の時代には、国家のスポーツ競技力が体制の優劣を比較する一つの方法として利用されることがあります。それゆえに共産圏においては、スポーツを生活の一つの方便として行うのではなく、国力を誇示するために競技力にあらゆる投資をしているのです。アメリカもこのような事実を知っているので、ソウル・オリンピックで勝利するために準備を行ってきたのですが、競技力を客観的に比較すればソ連に敗北してしまうことでしょう。ソ連はソウル・オリンピックを通じて、世界の人々に自国の優越性と優秀性を宣伝し、韓国もソ連のこのような計画的な宣伝に巻き込まれるおそれもなきにしもあらずです。

 一方、ソ連がソウル・オリンピックを自国の優れた宣伝用の舞台とすることを決定した以上、北韓は過激な挑発をすることはできないでしょう。しかし、そうかと言って小さな挑発までないとは考えられません。北韓の金日成政権が閉鎖的で、意外性に満ちているためです。ソウル・オリンピックにおいて、ソ連はアメリカを押しのけて優勝を果たし、そのことによって、ソ連は世界の国々や世界中の人々に対して最大限の宣伝をすることになるのです。ソ連を世界国家として宣伝するために、ソウル・オリンピックが最高の舞台となることでしょう。この先、世界は戦争という手段を通じては収拾することができません。ソ連がアフガニスタンから撤退しつつあり、またアメリカもかつてベトナム戦争で敗戦の苦杯を飲まされた経験をもっています。そのため平和的和合・交流問題が国家間において活発に論議されることと思われます。その一環としてスポーツ競技が最高の方法として選択されるのです。スポーツ競技は友好と競争力とをともに兼ね備えているからです。

 国家のイメージを対外的に宣伝する最高の方法がスポーツ競技(体育)であり、その次が文化交流です。文化交流は学術や教育を含めて共同の課題を一緒に研究する方法にもなり、また純粋な芸術活動を通じて相互理解と交流を分かち合うことも可能であるからです。我々は中共がアメリカとの関係改善を「ピンポン外交」から始めたことを記憶しています。中共はアメリカとピンポンを通じて敵対国から友好国へと変貌したのです。今やソ連が体育を通じて自由世界の国々と関係改善をしようとしているのです。

 ソ連においてボリシェビキの共産革命が起こってから七十年が過ぎました。レーニン、スターリンから始まって今日のゴルバチョフに至るまで指導者が十代目になりますが、十二代目に至って共産主義の崩壊を迎えることになるでしょう。事実上七代目のブレジネフ時代を過ぎて下り坂を歩んでいると見るのです。ソ連が共産体制を維持するために狂奔している間に、気がついてみると経済力の低下のせいで、帝国の巨大なその規模に比べて人民の生活が先進国の水準に及ばずにいるのです。体制的な閉鎖性のために生産力が低下して経済力が後退しつつあり、このままではソ連帝国が滅亡するかもしれないという焦りと不安感に浸っているのです。それがソ連の指導者たちの悩みです。これを打開するために果敢に解放政策を推進してはいますが、彼らの侵略的な属性のためにこれと言った成果を収めることが難しかったのです。そのようなイメージを脱皮しようとして、ソウル・オリンピックという宣伝の舞台を利用しようというのがゴルバチョフの計算なのです。(一九八八・五・一)




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